旅のまえに、おもう。
TYPICA LABのプロジェクトの打診を、メールで受け取ったときは、まずとても驚きました。また、この時期はまだコロナウィルスの影響が強く残っていましたので、海外渡航に制限がある時期でした。そんな状況で、こうした前向きな予定をブッキングする事で、未来に明るい予感を受けたことをよく憶えています。
いつも面白いことを仕掛けてくるのがTYPICAなので、そう簡単には驚かないつもりでいましたが、説明会で詳細を知ってさらに驚きました。このプロジェクトの構想はとてもシンプルで、一言にまとめてしまえば、「ロースターが集まる、産地に行く、生産者と会って彼らの仕事に触れる旅」という事ですが、さらに「その旅がプロジェクトとして、高い集中力をもって記録されている」という事を知らされました。ロースターが産地を訪れるのはずっと行われてきましたが、映像のスタッフを連れてロースターのチームが産地を訪れるのは、あまり例のない特別な事だと感じています。
そんな独特の臨場感をもった環境で、ロースター、インポーター、生産者、映像スタッフ、様々な背景と個性をもったメンバーと、旅をすることになるわけです。皆さんがご存じのように、旅は同行するメンバーのありかたで、みえる世界はどんどん変わってきます。こうしたレアな経験のできる機会で、楽しむところ、学ぶところがたくさんあると期待します。スペシャルティコーヒーの栽培から精製の現場に行くこと、その場で見ること、知れること、そして味わうこと。この経験と待ち受ける出会いを、楽しみにしています。
旅というのはとてもおもしろくて、旅人という視点と存在になることで、自分が見られるもの、知れるものには、新鮮な驚きや発見がある。同時にもちろん大きな限界もあって、現地の人でなければ知ることのないこともあり、外から来た人間にしか感じられないものもある。旅は人の内側に価値感の偏りをもった世界を残しますが、この価値感の偏った世界をもたらすのが旅の良さでもあると思うんです。それを受け止めて生きていくのが、人の一生なんじゃないかな。