2023.04.02
3.20② Finca El Zapote→Antigua
グアテマラのローカルな街をまた1時間ほど走り、Finca El Zapoteという農園に向かう。

途中から急に道路が舗装されなくなり、15人ほどを乗せたバスは大きく揺れながら走った。

すると、車窓に突然コーヒーの木が植えられている景色が広がる。バスの中から歓声が上がった。

ここの標高は約1,000mくらい、200haの広大な敷地でコモディティコーヒーを栽培している。長い下り坂の両サイドに見渡す限りコーヒーの木が植えられている光景には心躍った。

途中、一部の区画でコーヒーの花が満開に咲いていた。白くて小さなこのコーヒーフラワーは、一年に3日間しか咲かないらしい。その貴重な瞬間に立ち会えたのは本当に嬉しかった。嗅ぐとライムのような爽やかな香りがした。隣の区画はまた違う品種のようで、こっちはさらに甘い香り。コーヒーは花の香りも品種によって違うと知って感動してしまった。


花が咲き終わって散ると、緑色の小さな粒が枝に残り、この部分がコーヒーチェリーとして結実する。開花のタイミングから収穫時期が予想できるらしく、この辺りは11月10日ごろに収穫できるらしい。

コーヒーの木はきちんと整列して植えられていて、一定の間隔でバナナがシェードツリーとして植わっていた。バナナは育つのが早く、もちろん美味しく食べられるうえに、土壌に養分を残して成長してくれるので、コーヒーのシェードツリーに最適なのだという。


コーヒーの木の列に沿うように足元に黒い管が走っていて、それを通して水量をコントロールしている。昨年は雨が少なく、そのせいで一本当たりの収量が少なかったそうで、今年からこのシステムを導入したそうだ。最終的な結果はチェリーを収穫してみないとわからないが、今のところ開花の数はとても多く、進捗は上々らしい。

この広大な農園でチェリーを摘み取るピッカーは、最盛期で400人必要になる。ただ、近年ではアメリカへの移民などが理由で人手不足で、100人くらいしか集まらないこともあるらしい。また、コーヒーの育成に必要な肥料も数が足りないため、価格が2〜3倍に上がってしまっている。 これらの問題はすぐに解決できるものではないが、トライ&エラーを繰り返しながらビジネスの継続を模索しているそうだ。

ここはコモディティコーヒーの栽培を主に行っている農園だが、この問題はスペシャルティコーヒーに取り組んでいる農園でも変わらない。コーヒーの仕事を持続していくために深刻なこれらの問題に対して、いち消費国のロースターとして何が出来るのだろうか。すぐに答えは出ないけれど、考え続けて行動していく必要性を強く感じた。

次に収穫したチェリーからパーチメントコーヒーへ加工するWetMillを見学。ウォッシュドプロセスの発酵槽と、パーチメントコーヒーの乾燥を行うコンクリートパティオ、メカニカルウォッシュ用のドライヤーを見せてもらった。どれもとても大きく清潔で、コモディティコーヒーのスケール感を肌で感じることができた。ここでもやはり、知識として知っていることと実際に目にすることは大違いなんだと実感した。



そのあとはWetMillに併設のレストハウスの中庭で昼食。Chrisがサンドイッチとフルーツ、この農園で採れたコーヒーを振る舞ってくれた。プール付きの美しい庭に爽やかな風が吹き、とてもリラックスした時間を過ごすことができた。



ここで Chrisが話してくれたことだが、彼は以前日本の大手飲料メーカーの缶コーヒーの原料提供をしていたそうだ。当然とても大きな取引で、日本人はたくさんコーヒーを飲むんだなと思ったそうだ。しかし、ことスペシャルティコーヒーのカフェ文化で言えば、日本はまだまだ欧米や他のアジアの先進国に比べて遅れをとっていると言える。歴史的にコモディティやRTDが浸透しきっていて、これからさらに人口も減っていく日本のマーケットでスペシャルティを持続的に発展させていくには、やはりただ単に良いものを仕入れて売る以上の工夫が必要になると強く感じた。

農園を後にしたバスは、今夜の宿泊先であり、明日の農園視察の目的地でもあるグアテマラの古都Antiguaに向かう。道中、BAGTOWN COFFEE山本さんとお互いのお店や家族について話をした。広島でお店をされている山本さんとは今回の旅で初めてお会いしたが、きっとこの機会がなければお話しすることもなかったかもしれない。10日間の旅を通して新しい友達が増えることが本当に嬉しい。きっと今回のメンバーとはこれから先もずっと付き合いが続くような気がしている。
明日はいよいよスペシャルティコーヒーの生産に取り組む小規模生産者さんの農園へ向かう。今日見たコモディティ中心の農園とどのように違うのか、生産者さんと話をしながら見ていけたらと思う。