序章
コーヒーとの出会いは、スターバックスでのアルバイトを始めたことだった。
軽い気持ちで、なんとなくカッコよさそうだからという理由で働き始めたが、産地や精製方法などによって異なる味わいの違いの面白さに虜になった。
そしてそれからほどなくして、当時暮らしていた宮崎にもいわゆる浅煎りのスペシャルティコーヒーを取り扱うコーヒー店がオープンした。
そこで初めて口にした浅煎りのケニアやエチオピアといった国々のコーヒーに衝撃を受けた!本当にカシスジャスミン、メープルシロップの味がする!
コーヒーの概念が完全に変わってしまった。
ワーキングホリデーなどでコーヒーに触れバリスタになる者は多いが、自分がコーヒーによって人生を変えられたのは、他でもない宮崎でのことだった。
それも音楽家を目指し大学を中退したはいいがうまく行かず、将来を見失っていた最中での。
当時はお金のために働くのが嫌で嫌で仕方がなかったが、これなら仕事にしたいと思った。
くすぶっていた音楽だけでは上京するイメージが全く湧かなかったが、コーヒーならなんとかやれるかもしれない…。
そう思う事ができ、ようやく東京に向かう決心がついた。