コーヒーは暮らしを豊かにする[#5]

ビジネスカッピングがいよいよ始まった。シンプルでラフに準備されていた。

お客様に提供する生豆を選ぶ重要な時間だったから、慎重に、集中して味わった。

エチオピアの環境でカッピングを完璧に準備することは難しいと思う。

冷静に言うと、焙煎度合いや水の硬度など、私たちが重視する技術的な部分が足りていない。

経験を活かしてみる。

技術的な部分を排除し、生豆が本来持つ特性を探る。

提供されたコーヒーは、生産者の人生が込められたものだと知っている。だから、その一杯一杯を大切にした。

興味深かったのは、日本のロースターと私の選ぶ豆が異なっていたことだ。

私は、生豆が入荷される時期、そしてアイスコーヒー(販売量の60%以上を占めている)に焦点を合わせている。

リンゴ酸やクエン酸がよく表現される果物のようなコーヒーを選んでいたのだ。

より厳密に言うと、質の高いリンゴ酸が表現される生豆を選んでいた。

端的に言えば、日本のロースターは品質が高いものを、私は美味しい飲み物が作れるものを探していたのだ。

ビジネスカッピングが終わり、夕食を食べた。なかなか素晴らしい食事だった。

私たちを照らす月明かり。エチオピアでの最後の夜を限りなく照らしているようだ。

しかし、永遠に続くように感じたエチオピアでの最後の夜も終わりを迎える。酔っ払って起き上がれなかった私たちも、解散しなければならなかった。