新たな入り口

約10年前、近所にオープンしたコーヒーショップで何気なく注文した「エチオピア ナチュラル」。この「エチオピア」が初めてスペシャルティコーヒーの世界に触れるきっかけとなった張本人である。それまで苦いコーヒーしか口にしたことがなかった私に、ベリーや紅茶のようなコーヒーでは感じたことのない風味と気品で感動体験を与えてくれた。それからはコーヒーを飲み歩く日々。気が付けばコーヒーに夢中になり、この仕事を本気でやりたいと強く思うようになっていった。

数年後、開業と共に焙煎機を手にした私が初めての焙煎に選んだコーヒーは「エチオピア」。あの時の感動へのお返しと言ったら過言かもしれないが、多くの人にこの素晴らしい風味を味わってもらいたいと思った。その結果、手前味噌だが私の周囲には「エチオピア」がきっかけでコーヒーに目覚めた人も多いはず。

そして開業から5年が過ぎた今、初めて生産地を訪れる場所が「エチオピア」に決まった時は運命すら感じた。生産者と会うことはロースターとしてマスト、会うことでようやくロースターとしてスタートラインに立てると常々考えてきた。要するに今回の旅は私のロースターとしての序章である。

私のコーヒー人生において必ず新たな入り口にいる「エチオピア」。

この国で何を見て何を学ぶのか、12月の訪問がとても楽しみだ。