未来への植樹
エチオピアの朝は寒い。
寝袋から出て、ひんやりとした空気の中を散歩すると、美しいグラデーションを纏った景色やいくつにも重なった環境音への感度が高まるようだった。
この日は再度Wete Ambelaの2人と合流して、彼らが運営するドライミルへ向かった。
緩やかな傾斜に広く建設された棚田のようなアフリカンベッドは、アフリカ大陸の生産地として見る写真そのもの。
収穫期を過ぎていたため稼働はしていなかったものの、敷地内を歩きながらたくさんの説明を受けた。
印象的だったのはエリアスさんが話した「周りの地域の人たちが幸せにコーヒーを生産できることが僕の幸せだ」という言葉。
社会において、自分という存在は他者がつくる。周りを幸せにできるよう行動し、その中心にいることが、本来、人が感じる幸せの形なのだろう。彼の言葉から本質のようなものが垣間見えた。
その後、彼らの好意でコーヒーの苗木を植樹させてもらえることになった。
何年もコーヒー生産国に通っていたし、何度も収穫体験や生産処理の体験をしていたけれど、苗木の植樹はそういえばはじめて。
heirloom の苗木を自分の手でエチオピアの大地に植えながら、またこの場所に帰ってきたいと強く思った。