買い付けるものは何か
最後の二日間、Wete Ambela社、Moplaco社それぞれのオフィスを訪問し、施設の見学やニュークロップのカッピングをさせてもらった。
Wete Ambelaは2018年創業のいわゆるスタートアップ。これまでエチオピアのコーヒー流通を一手に担っていたECXの規制緩和により参入した若い会社だ。
オフィスはエレベーターのないビルの4階にあり、自分の足で階段を上らなければならない。
小さいながらアディスアベバを見下ろすことができる眺めの良いオフィスだ。
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シンプルなサンプルロースターに家庭用のグラインダー、家庭用のケトル。ここが創業したての会社だということを感じさせてくれる。
ほんとうにお金がなく、あるものを全て使ってお店を立ち上げた自分の当時の姿と重なって見えた。
並べられたカッピング用のサンプルはどれも品質が高く、日本で焙煎したいと期待させるものもいくつかあった。
正直、焙煎度合いや挽き目の管理など、改善すべき箇所はいくつもあったが、それでもポテンシャルの高いコーヒー豆をカッピングすることはとても気持ちが良い。
実際、複数のロットを買い付けオファーさせてもらった。
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カッピング後は、韓国のロースターを交えてディスカッションをおこなった。
それぞれのコーヒーに対する評価や感想を1人ずつコメントしていくのだが、日本のロースターと韓国のロースターが話す内容には大きな違いがあった。
日本のロースターはそれぞれのコーヒーについての評価を的確にコメントし、数値化する。
それは現地の生産者が求めるフィードバックの大きなひとつでもある。
対照的に韓国のロースターはどのコーヒーが消費者に好まれるかを予測しながら評価をする。
自分たちがなんのために、誰のために買い付けをおこなうのかをしっかりと把握しているのだ。
市場や文化の違いはあれど、韓国では創業してすぐに月間1トン以上を焙煎する規模に成長するのだそうだ。日本でその規模を達成するのはほんの一握りだろう。
この違いを、この旅でずっと考えていた。そして彼らのコメントを聞きながら腑に落ちた。
例えるなら、日本のロースターは評価のプロ、韓国のロースターは買い付けのプロ、なのだろう。
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品質の評価はもちろん大切だが、すでに品質が担保されたスペシャルティコーヒーのシーンでは、消費者に喜ばれるコーヒーを手に入れることがまずはとても重要となる。
買い付けの基本原理に忠実な韓国ロースターのカッピングを見ながら、僕ももっと多角的なカッピングをできるようにならないといけないと自戒した。
産地に通い始めて10年以上が経つが、このタイミングで新しい視点を得られたことはとても大きい。意図せずともそのチャンスを与えてくれた韓国ロースターのみんなに感謝したい。